☆彡吉田簑助師の引退

 4/20に南海本線諏訪ノ森駅旧駅舎で「第2SACAY東西の糸」ライブを行いました。

時節柄あまり大きく告知はしていませんでしたが、少数のお客様と和気あいあいと楽しい時間を過ごさせていただきました。吹奏楽をしているという地元の高校生も聴いてくれました。

 ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。

 

 文楽人形遣いの人間国宝、吉田簑助師が引退されました。上品な技芸員さんたちの代表格のような方で大好きでした。1998年に脳出血を発症されましたが厳しいリハビリの末に舞台復帰、7歳での入門から数えること81年間の現役生活だったそうです。お言葉は今も少しご不自由なようですが、人形遣いとしての芸を全うされるお姿に「神様は時として人間に試練を与えるけど、本当に必要なものをその人から奪ったりはしないのだな」と勇気づけられたものです。

 本来ならば425日の千秋楽が引退公演となるはずだったのですが、緊急事態宣言の発令によりなんと25日は休演。前日の24日が最後の舞台となりました。現役は引退されますが、後進の指導は続けられるそうです。末永くお元気で、文楽や日本文化を見守っていただきたいものです。

 引退のニュースは今公演の中盤あたりで流れたので、急いで25日のチケットを買った人も多かったでしょう。私も仕事が休みだったら買っていたと思います。満席だったという25日は残念ながら払い戻し、みなさんがっかり。そしてたまたま24日のチケットを持っていた人は大喜びだったでしょうね。

 それにしても、81年も文楽一筋に生きてきた方の引退がこのような日程のいたずらに翻弄されるなんて……というのはシロウト考えで、私が思うに、第一人者であるがゆえ引退の日もその前の日も、いつも通りの芸を精魂込めて遣うということは普段の一日とまるで変わらなかったのではないでしょうか。ただその普段の一日が予定よりも一日分減っただけ、ということです。

 三味線を始めたこと、文楽など伝統芸能に触れるようになったこと、またある程度の年齢を経たことで、私は「いつも通りの一日を、いつも通りお稽古に励み、いつも通り物事を考え、いつも通り一生懸命生きる」ことの大切さをよく考えるようになりました。「ちょっと違った特別な楽しい一日」というものは、もちろんとてもよいものですが、芸事をして生きていく日常に比べればなんてことないものなのでしょう。愚直に、素直に、毎日毎日同じように訓練を続けてこれからの何十年かを生きていければ。そしてその中で三味線文化を守り、広める活動に少しでも加わることができれば幸せだろうなと思っています。