☆彡桐竹勘十郎さん人間国宝

 夏休み文楽公演『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』に行きました。技芸員さんたちは夏らしく涼しげな白の着物での登場。だんじり囃子の音が遠くに聴こえる中、繰り広げられる義親子の確執、ついに起こってしまった悲劇の現場ではだんじり囃子が前景に表れ凄惨な殺人も夢の中の出来事のようです。数ある演目の中でも演出はピカイチといってよいのではないでしょうか。

 夏の文楽の定番であり今までに何度か見ている演目ですが、今回特に小道具の使い方の繊細さに目を見張りました。登場人物のそれぞれが団扇を持っているのですが、女性のたおやかなあおぎ方、男性の威勢のいいあおぎ方、怒った時に団扇を床に打ち付ける様子などなど。並んだ人形が全く別々の動きで団扇を使っています。落語では扇子を小道具に使っていろいろな場面を表しますが、文楽の場合は人間でなく人形に団扇を持たせてそれぞれの動きをさせ、心情や身分の違いを表すのですからより難しいのではないでしょうか。

 小道具の使い方といえば、文楽では台所仕事をする人形たちの様子も楽しいです。お米を研いだり大根を切ったり、はずみで指も切ってしまって痛たた……なんて場面まで、人形が演じているとは思えないような細かくリアルな動きで、きっと人形遣いさんたちは仕事に生かすため家で実際にお米を研いでみたりしてるんだろうなと思います。洗い桶からお米がこぼれてしまわないように気をつけて水を流す動作なんて、実際にやったことがなければとても思いつきませんもの。

 それから縫い物や繕い物をする場面。こちらは人形遣いさんにとってはお手のもの。なんせ公演ごとに人形の着物をご自身の針仕事でしつらえるそうですから。あと、人形サイズに作った三味線や琴を演奏する場面は三味線弾きさんの指導を仰いでるんでしょうか。弾いているふりの人形と、実際に音を出す三味線弾きさんの、離れていても息の合った共演も見どころですね。文楽ファンの方ならきっと、ここに挙げた見どころのそれぞれが、どの演目にあったかを「そうそう」なんて思い出しておられるでしょう。

 

 

文楽人形遣いの桐竹勘十郎さんがこのたび人間国宝に認定されました。予想していたこととはいえ大変うれしいです。いつも若々しく行動的で、いろんなアイデアで文楽界を盛り上げていらっしゃる勘十郎さん。近いうちに勘十郎さんの「狐忠信」がまた見たいです。