2025年6月18日、初の万博観覧そしてEXPOホール シャインハットにて上演された山本能楽堂さんの『いのちの能「水の輪」』に読売新聞社わいず倶楽部の「地謡隊」として参加させていただきました。
今まで能は数回しか鑑賞したことがなく、難解なイメージがありました。しかし今回はとても新鮮で迫力のある舞台に惹き込まれ、見惚れすぎてラストの合唱の謡い出しをしくじってしまったほど。舞台と客席双方の謡い声の響きは荘厳で、終演後は観客総立ちのスタンディングオベーション。
能や文楽など日本の舞台芸術は通常は演目が終わるとすぐ幕を引きます。能舞台は幕はないけど比喩です。カーテンコールなんて全くなし。観客も心得たもので当たり前のように演目が終わるや否や席を立って帰り支度。文楽を観始めた頃はとてもびっくりしましたが、今ではこのすっぱりと終わる感じがすごく日本的な格好良さ、武士の最後とか桜の散りぎわにも通じる美学だと思っています。海外公演や今回のように外国の方々も鑑賞する場ではスタンディングオベーションもよしとしよう。
話は変わりますが、まだ私が三味線を始めて間もない頃、当時同門であったYちゃん(現、くるま座のメンバー)と二人、弾丸フェリーで別府旅行をしました。今の弾丸フェリーは行きと帰りに船内で1泊ずつ、現地0泊(別府に朝着いて夜まで滞在)というまさに弾丸なのですが、当時は別府の健康ランドの仮眠室(一応個室)で1泊できるという夢のような弾丸フェリーのパックがあったのです。
帰る日、出航は夜なので別府市内をのんびり散策していると、能楽教室のような表示のある建物がありました。カルチャーセンターか資料館みたいなものかなと思い、ちょっと覗いてみようと恐る恐るドアを開けたらちょうどアマチュアの方のお稽古の真っ最中。びっくりしたのですが、教えておられた先生に「私たちは三味線を学んでいる者ですが、旅行中こちらを通りかかり、興味があるので見学させていただけないでしょうか」とお願いしました。なんか能の一場面みたいだな。
先生は「どうぞどうぞ」と温かく迎えてくださり、お稽古中の謡のコピー資料までくださいました。お稽古が終わって少しお話させていただいた時「大阪から来ました」と言うと先生も大阪在住で時々別府に教えに来られているとのこと。これは奇遇だとお話もはずみます。帰阪して次の三味線教室の日に当時の師匠にその話をし、いただいたお名刺を見せてビックリ! なんと別府で見学させていただいた先生は山本能楽堂の代表理事 山本 章弘先生だったのです。師匠からは「こんな偉い先生のところに、よくアポ なしで行ったな」とあきれられるやら叱られるやら。いや~知らないってオソロシイ。でも知らないってある意味強い。
山本能楽堂さんでは能はもちろん伝統芸能に関するいろんなイベントをされているので時々お伺いしていますが、伺うたびにあの別府でのひとときを楽しく思い出しています。今回の「水の輪」も募集告知を見てすぐさま申し込みました。本当に楽しかったです。ありがとうございました。
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kirokuya (金曜日, 20 6月 2025 19:14)
グローバル?なご活躍!
芸は身を助けてもくれ、楽しませてもくれるのですね(*´-`)
雛澪 (土曜日, 21 6月 2025 01:01)
芸は身を助くる、となればよいのですが。