事前の情報から、社会派の問題提起系の作品と思って観に行ったらいい意味で裏切られた。綾野剛、柴咲コウの怪演によって社会派にとどまらない作品となっている。
とくに綾野剛さん。イカレ教師の場面では彼自身を(役柄ではなく綾野剛本体を)大嫌いになりそうなくらいの狂いっぷり。そして善良な教師の場面では感情移入して涙、涙。なんでこの人ってこんなに百面相なんだろう。すごすぎる。映画の後半ほとんど泣きっぱなしでした。
家族との絆や救世主の登場も見どころ。小林薫さんの素敵なことといったら! こういった人間関係の温かさが丁寧に描かれているので、暗い気持ちになりそうな観賞後感も救われる。
この映画は社会派作品であり、パラレルワールドを描いたSFであり、ホラーであり、ヒューマニティドラマでもある。
若かりし工員だった剛さんがネグレクト状態の姉弟に勉強を教えるシーン、柴咲さんが子供時代にやはり親から酷い仕打ちを受けていたという現実、そしてラストの剛さんが柴咲親子の幻想を見るシーン……。親の生き方次第で子供が最大の被害者になってしまうことがあるのだ、というのももしかしたら三池崇史監督が言いたかったことの一つなんだろうかとも思った。
一つ難をいえば、亀梨和也さんが格好よくていい味も出してるのに、チョイ役に終わってしまったのは残念。事実に基づく話だからあまり伏線を凝らしたりもできなかったのかな。
あっもう一つ難が。10年後の剛くん、いくらなんでも老けすぎやろっ! 息子さんが教育実習生だからまだ50代始めくらいじゃないの? 波平くらい老けてた。
好きな映画に関してこんなに明確に感想を述べられたのは初めてかも。綾野剛さん、共演のみなさん、そして三池崇史監督に敬意を表します。
本当に素晴らしい映画。「国宝」もいい映画だけど私は「でっちあげ」に軍配を上げます。すべての人が今観るべき映画だろう。
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kirokuya (木曜日, 03 7月 2025 02:44)
綾野剛さんお目当てで観に行きました。
法廷劇は言葉の応酬で動きが少なく、また難しい法律用語が飛びかって苦手なのですが、この作品では、対立する母親と教師の目線から、ビジュアル化 して観せてくれたので退屈しませんでした。
構成もスッキリしてました。でっちあげられていく前半部、弁護士の登場で、でっちあげをほどいていく後半部。全編とおして綾野剛さんの演技力に感服。対して柴咲コウさん残念、嘘をつきとおすなら鉄面皮を貫くのは逆効果ではないだろうか。大袈裟はでない適度な表情の変化を出さないと!小林薫さん安定の演技力。
社会派ドラマとして観るなら、今の世の中全ての事々に、すでに政治家、マスコミ、マスメディア、SNS…からでっちあげられていないか?再考をうながしてくれる映画でありました。
役者 小林薫 についてのコメントがあるのですが、起きぬけでない、比較的頭の冴えた時にします。
三池崇史監督の秀作でした。
3.8/5.0 評価。
雛澪 (木曜日, 03 7月 2025 21:47)
あれからいろんな人のコメントをネット上で読むと、綾野剛さんに対して
ものすごい賛辞が集まってますね。
10年後が老けすぎっていうコメントもいくつかありました。
kirokuyaさんも同感されてましたよね、やっぱりみんなそこは違和感あったんだな。
それから、剛さんが奥さんに離婚を言い出す場面を絶賛してる人もいました。
私もあの言い方はすごくリアルでうまいなあ~と思いました。
小林薫さん評、楽しみにしてます。
kirokuya (金曜日, 04 7月 2025 02:35)
共演者が脇を固めるという言い方がありますが、離婚を言いだされた時の奥さん、木村文乃さんの、夫を信じきって全くぶれない凛とした態度に感動しました。もう一人、真実を知ってるが仕返しが恐くて、証人として法廷にはよう出ん私の好きなあんたま(安藤玉恵)ちゃん、この二人は目立たないけど、しっかりと脇役しておられた。
kirokuya (金曜日, 04 7月 2025 03:44)
ー小林薫さんのことー
役者デビューの最初から(途切れることなく)舞台、TVドラマ、映画に出続けておられる稀有な役者さんの一人です。そのデビューは状況劇場という劇団でした。唐十郎さん(アングラ演劇の始祖)が主宰され、1960~1970の演劇界に革新と衝撃をもたらしました。劇場での公演がほぼ100%だった時代に野外にテントを張って、本火、本水を使うスタイルを確立されました。芝(地面)居(居る)とは本来そのようなものであり、まさに原点への回帰でした。よく観覧にきておられた当時の中村勘九郎さん、後の十八代目中村勘三郎さんが平成中村座を興されたのは周知のとおりです。
大衆と同業者の支持を集め、テントの中は、役者と観客が渾然一体となるカオスな空間でした。そこへ登場してきたのが若き日の小林薫(お待たせしました)だったのです。創立メンバーの次の世代の役者さんでしたが、そのパフォーマンスは圧倒的で、まさにスターでした。
退団後は記憶に残るところでは、TVドラマ*ふぞろいの林檎たち での父親役、近年では朝ドラ*カーネーション での岸和田のおやじ、*深夜食堂 でのカウンター食堂のマスター、映画*首 での徳川家康など枚挙にいとまがありません。どの役においても………
(自分)をさらけ出し、ハジけていらっしゃる!
立ち止まらずに淡々と歩んでおられる姿に、同時代人として勇気づけられます。今回の弁護士役もヒットです。
雛澪 (日曜日, 06 7月 2025 22:08)
小林薫さん舞台の方だったんですね。すっかりテレビ俳優のイメージでした。
最近、自分の映画の観方について気づいたことは、役者(演技や人間性)あるいは制作者の映画的センスを重視してるなあということです。
「国宝」はよかったけど物語としては想定の範囲内。「でっちあげ」にしても、ドンデン返しを描く手法にはやや新鮮さを感じたものの、なんとなく予想はつくストーリーです。
吉沢亮、横浜流星の演技とそれまでの努力に私は80点をつけたし、綾野剛ほか共演者の演技に120点をつけ、それがそのまま映画に対する点数になってる気がします。
kirokuya (月曜日, 07 7月 2025 01:54)
私が映画鑑賞で重視、または期待してるのは、
①役者の熱量と力量
(演技、人間性と似ているかも…)
②娯楽性
③映像美
社会性とかテーマには注目していません。もちろん、①~③を実現するのは、脚本であったり、役者の表現力を引き出す監督の力であったりします。
映画だから出来ること、映画でしか出来ないことに注目して、今日も映画館に脚を運びます。
*夏の砂の上
@109シネマズ箕面
高石あかりさんの熱と力を拝見しに行きます。
雛澪 (月曜日, 07 7月 2025 22:04)
「映画だから出来ること、映画でしか出来ないこと」
いい言葉ですね!
雛澪 (月曜日, 07 7月 2025 22:31)
「社会性とかテーマには注目していません」なんとなくわかる気がする。同感です。
あと、柴咲コウさんの「鉄面皮」は違和感を醸し出すことで彼女の異常性や映画の
ホラーっぽさを出せていたのかな、と思いました。
でも以前知人が「柴咲コウってどの芝居も一緒や」と言ってたのもちょっと
思い出しました(^_^;)
kirokuya (火曜日, 08 7月 2025 08:44)
上記
③映像美とありますが、
③映像表現に訂正します。