☆彡映画「でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男」

 事前の情報から、社会派の問題提起系の作品と思って観に行ったらいい意味で裏切られた。綾野剛、柴咲コウの怪演によって社会派にとどまらない作品となっている。
 とくに綾野剛さん。イカレ教師の場面では彼自身を(役柄ではなく綾野剛本体を)大嫌いになりそうなくらいの狂いっぷり。そして善良な教師の場面では感情移入して涙、涙。なんでこの人ってこんなに百面相なんだろう。すごすぎる。映画の後半ほとんど泣きっぱなしでした。
 家族との絆や救世主の登場も見どころ。小林薫さんの素敵なことといったら! こういった人間関係の温かさが丁寧に描かれているので、暗い気持ちになりそうな観賞後感も救われる。
 この映画は社会派作品であり、パラレルワールドを描いたSFであり、ホラーであり、ヒューマニティドラマでもある。
 若かりし工員だった剛さんがネグレクト状態の姉弟に勉強を教えるシーン、柴咲さんが子供時代にやはり親から酷い仕打ちを受けていたという現実、そしてラストの剛さんが柴咲親子の幻想を見るシーン……。親の生き方次第で子供が最大の被害者になってしまうことがあるのだ、というのももしかしたら三池崇史監督が言いたかったことの一つなんだろうかとも思った。

 一つ難をいえば、亀梨和也さんが格好よくていい味も出してるのに、チョイ役に終わってしまったのは残念。事実に基づく話だからあまり伏線を凝らしたりもできなかったのかな。
 あっもう一つ難が。10年後の剛くん、いくらなんでも老けすぎやろっ! 息子さんが教育実習生だからまだ50代始めくらいじゃないの? 波平くらい老けてた。
 好きな映画に関してこんなに明確に感想を述べられたのは初めてかも。綾野剛さん、共演のみなさん、そして三池崇史監督に敬意を表します。

 本当に素晴らしい映画。「国宝」もいい映画だけど私は「でっちあげ」に軍配を上げます。すべての人が今観るべき映画だろう。

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コメント: 1
  • #1

    kirokuya (木曜日, 03 7月 2025 02:44)

    綾野剛さんお目当てで観に行きました。

    法廷劇は言葉の応酬で動きが少なく、また難しい法律用語が飛びかって苦手なのですが、この作品では、対立する母親と教師の目線から、ビジュアル化 して観せてくれたので退屈しませんでした。

    構成もスッキリしてました。でっちあげられていく前半部、弁護士の登場で、でっちあげをほどいていく後半部。全編とおして綾野剛さんの演技力に感服。対して柴咲コウさん残念、嘘をつきとおすなら鉄面皮を貫くのは逆効果ではないだろうか。大袈裟はでない適度な表情の変化を出さないと!小林薫さん安定の演技力。

    社会派ドラマとして観るなら、今の世の中全ての事々に、すでに政治家、マスコミ、マスメディア、SNS…からでっちあげられていないか?再考をうながしてくれる映画でありました。

    役者 小林薫 についてのコメントがあるのですが、起きぬけでない、比較的頭の冴えた時にします。

    三池崇史監督の秀作でした。
    3.8/5.0 評価。