ゴールデンウイークの最終日、出勤のため繁華街を歩いていると後で親子づれの声がする。
幼稚園くらいの女の子「ストロベリー・ハワイ食べたよ。おいしかった」
お父さん「ふ~ん、よかったねえ」
私(心の声)「ストロベリーハワイってなんじゃい??? ブルーハワイと混ざってるんかな? でも幼稚園児の語彙にブルーハワイ(カクテル)はないか。31(サーティワン)のアイスクリームにでもそういうのがあるんかな?」
しかし、微笑ましく聞いていた私の心は幼稚園児の次の一言で大爆発となる。
幼稚園児「うん、すごくおいしかった。口の中でイチゴが踊り出すの」
お父さん「え……え、そうなんや」
幼稚園児「口に入れた瞬間にねえ、イチゴが一斉にダンスするの」
な~にがイチゴのダンスじゃい! ちび助がどっかで聞いたようなセリフ使うんじゃねぇ! あの年齢にして既に世間にはびこる陳腐な表現を身につけてしまったとは、目の前が暗くなる~サントワマミーだわ。嘆かわしいことこの上ない。
ふと思い出す。小学校の時の担任M先生、日々の宿題の他に「自由勉強」と称するものがあった。やってくるかどうかも自由だし、自分で好きな問題集を解いてもよいし何をしてもよい。提出すると先生が赤ペンでコメントを書いてくれる。
文章を読み書きするのが好きだった私は、自由勉強のノートに詩や連載小説などを書いて提出していた。問題集を解くより楽だし趣味と実益を兼ねている。先生はいつもそれをほめてくれて、授業中にみんなの前で私の作品を朗読してくれたり、放送委員に頼んで給食の時間に全校に私の小説を流してくれたりした。
作者にとってはとても恥ずかしくて給食も食べた気がしなかったが、児童のやる気を出させてくれるとてもいい先生で、授業も上手だったし大好きだった。
ただ、幼稚園児の言葉を聞いて思い出したことがある。ある日の自由勉強に私は「消しゴム」というタイトルの短い詩を書いた。詳細は覚えていないが
消しゴムで字を消すと消しゴムが真っ黒になって、
ごしごし消しているところはすごく熱くなる。
消しゴムが痛さをガマンしている証拠かな。
というもの。
戻ってきた自由勉強帳には最後の行に花丸がついており
「消しゴムの気持ちを想像したところが素晴らしい」のようなコメントが書かれていた。
でも私自身はこの詩を全く気に入っておらず、自由勉強のネタに困った末に適当に絞り出した詩だったのだ。それほど気持ちがこもっていなくても、普通でない考え方や珍しい表現をすればほめられるのか、といったことに小学生ながら非常に違和感を感じたのを覚えている。
「イチゴのダンス」を口にしたあの子、口当たりのいい表現や誰かが言ってたような表現ではなく、自分自身の心と言葉で話せるような人に成長することを祈ります。
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kirokuya (火曜日, 12 5月 2026 03:44)
*消しゴム 刺さりました。
自由勉強のある小学校が姉さんの文学への入り口だったのかもです。
たぶん同じ年齢の頃…おかあちゃんのおなかはふわふわで…で始まる母の腹を風船に例えた詩を書いて市のなんかに載った記憶がある。紛失。
年を経て高一の時、同じクラスのミシマくんから北杜夫の*ドクトルまんぼう青春期 を渡された。小説ではなく回顧録のような物であったが、旧制高校での生活を記したこの作品が面白く、モロに影響され、高下駄履いて通学したり…以降彼は私の文学の師匠となり、他の作家の作品の作品も読むようになった。校内新聞に投稿小説が掲載され(現存)、進路希望の、なりたい職業欄?にぼんやりと、文筆業なんて書いていた時期もあるが見切りをつけるのも早かった。
消しゴムは利他の為だけにうまれてきて、身を削ってくれていたのだ!
kirokuya (火曜日, 12 5月 2026 04:02)
訂正
他の作家の作品の作品
↓
作品
40年の時を経て今、ミシマくんからの情報で、その母校から芥川賞作家がうまれた。読んでみたが、何も刺さらなかった。
雛澪 (火曜日, 12 5月 2026 10:28)
「イチゴのダンス」と「ガマンする消しゴム」は一見違う話のように見えますが「自分の言葉でなく借り物の言葉、ウケようとしている言葉」というのが似ています。
私には消しゴムのガマンは刺さりません。軽いタッチでよく消える消しゴム、キレイな色やいい香りの消しゴムは刺さります。
堺の職人さんが言ってた「時間かける仕事にロクな仕事はありまへん」という言葉も思い出しました。熟練とは早く、美しく、正確。ガマンは美徳でなく稚拙。ちなみに、本当によく消える消しゴムは摩擦で紙を傷めることもなく真っ黒にはなりません。
「借り物、受けようとしている言葉」はAIを彷彿とさせます。読売新聞に筒井康隆さんのインタビューが載ってましたが、AIが小説を書くことについて「箸にも棒にもかからん」と仰ってました。ホッとしました。AIには「作家になってやろう」という気がないからだろうとのこと。ご本人は91歳ですが、まだまだ書けそうだと仰ってます。
kirokuya (水曜日, 13 5月 2026 03:18)
訂正
*ドクトルまんぼう青春期
↓
*どくとるマンボウ青春記
作品名間違えるとはなんたる失態。
北杜夫先生、失礼しました。
たしか中央公論社刊行のハードカバーの本で厚さ3㎝はあり360円だった。先述の芥川賞受賞作*叫び、ハードカバーながら、1㎝の厚さで1870円。最近新刊書買ってなかったので驚いた。
OK!この項しっかりチェックしました。