☆彡いっせき住吉寄席

  223日(日)はカルチャーカフェ上方のマスター、夢うつつさんが司会を務めるいっせき住吉寄席に行った。関西大学落語大学(落研と言ってはいけないのだ)のOBの方々による恒例の落語会。

  千里家笑太郎さんの「宿屋仇」とつたの唐丸さんの腹話術がお気に入り。笑太郎さんはカフェで聴かせていただく落語は優しい話し方だがホールではとてもダイナミックで、落語に出てくる口上(みたいなの)や唄も素晴らしく、とても勉強になる。

  唐丸さんは腹話術ももちろん楽しいが、ネタ創りがすごくお上手だなあと思った。言ってみれば定番の笑いなのだが、センスがいいのかすごく笑えるし安心して見ていられる。ひと昔前のサザエさんみたいな感じ。最近のサザエさんは見てないけどいろいろと批評もあるようでして。

  さてホールを出てから一緒に行っていた夫に「宿屋仇はええ話やな~! 嘘だった、という笑えるサゲなんやけど、嘘ではなくてホンマは本当やったとしたら人情噺という解釈もできる」と言うと、夫はどう思ったのか「ほぉ」とだけ言った。

  家に帰ってそういう解釈がないのかとネットを見てみたが、残念ながらなさそうであった。嘘かまことかの話になるとややこしいが、考えられるパターンを私なりに表にしてみる。

 

<宿屋仇の本来のサゲ>

 源やん:人を2人殺したと言ったのは嘘で、色事師ぶるために三十石船で聞いた話を我がことのように話しただけ。自分は嘘をついているが相手も嘘をついているとは知らず、濡れ衣で切られると思ってびびっている。

 

侍:殺された奥方の夫だと言ったのは嘘で、そうでも言わないと隣室の源やんたちが静かにしてくれないから言っただけ。自分は嘘をついているが相手も嘘をついていることは知らない?

 

源やんの真実

侍の真実

源やんは

侍は

人間関係

殺してない

夫でない

サゲの通り

サゲの通り

単なる偶然の出会い

殺してない

夫だ

サゲの通り

サゲに反する

侍は真実に反し「嘘だ」と言うことにより事を荒立てないよう気遣いしている

殺した

夫でない

サゲに反する

サゲの通り

侍にとっては他人事

殺した

夫だ

サゲに反する

サゲに反する

源やんは切られるのが嫌で「嘘だ」と言い、侍は真実に反し「嘘だ」と言うことにより事を荒立てないよう気遣いしている

  

 どうでしょう。4番目のパターンだとめっちゃいい人情噺になりませんか?

  私はなんで夫に「ほぉ」とだけ言わせるような、こんなややこしい解釈をしてしまうのかとよくよく考えてみたら、思い当たることがあった! 文楽だ。

 私は文楽ファンなのだが、文楽の話はとても入り組んだものが多くて「本当は本当なのだが相手を思いやって嘘だと言って事なきを得る、実はその嘘だ、と言ったのが嘘であった」とか「自分の息子のふりをさせて主君の子息をかくまっているが、自分は主君を欺いて主君の子息を見殺しにする、だが本当は主君を欺いたというのは嘘で、かくまっていたのは実は本当の自分の息子であり主君の子息を守るために自分の息子を殺したのだ」とか、書いていても何を書いてるのかわからなくなるような話が多い。これが文楽劇場で観ると何故か理解できるのが不思議であるが、そういう文楽を日頃観ているので、ストーリーを裏返して裏返してもう一回くらい裏返して観てしまうのだなということに気づいたある冬の一日。