<困ったときのお役に立ちます! 芸事のマナー事典>

 

 芸事を学ぶ中で、作法や振る舞いについてどのようにすればよいか迷うことが時々あります。そんな時「一般社会人としてのマナーや常識については、本とかインターネット上で簡単に調べられる。芸事の世界でも通用するマナー本やサイトがあればいいのに」と私は思ってきました。

 なぜそういう本がないかといえば(サイトはあるかもしれませんが)、まず需要が少ないということ。それから、一門や師匠によって考え方が微妙に違うことから、芸の世界のことは自分の師匠か先輩に聞く、というのが一般的な方法だからでしょう。

 もちろん私も今まで師匠や先輩方にいろんなことを教わってきました。ただ「このことは師匠には聞きづらいな」とか「どの先輩に聞いたらいいかわからない」「今すぐ答えがほしいのに」「こんなささいなことを聞くのは申し訳ない」とか悩むこともたびたびでした。

 で、ないんだったら作っちゃえ! てことで、このコーナーを始めることにしました。私自身「芸事は一生勉強」の途上にある身ですから、あくまでも個人的な体験からくる考えを提示しているに過ぎません。各芸能のジャンルや流派、一門によっていろいろな考え方ややり方があるという前提のもと、困ったときに少しでもお力になれば幸いです。1回目は少し長文ですが、今後はできるだけ簡潔に、どんどん書き足していきますので時々覗いてみてくださいね。

 

 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

12:師匠のお稽古中の態度について♪♪

 

 お稽古中、師匠が演奏などの注意点をお手本として見せてくださる時があります。その時は自分の手を止めてきちんと見るようにしましょう。やってみるのは師匠の指示があってからです。

師匠のお手本中に自分でもやってみたくなる気持ちはわかりますが、いつの間にか自分の世界に入り込んでしまい、本末転倒になっている人を時々見かけます。その人の音で肝心の師匠の音や説明が聞こえにくくなったりすると他の人も困りますし、せっかく説明してくださっている師匠も気を悪くされるかもしれません。
 また、新曲を習う時など師匠がお手本の演奏をしてくださり、家での復習用に録音させてくださることがあります。その時に、一生懸命譜面を追っている人がいます。譜面は家でいくらでも見られますよね。師匠のお稽古の時は、新曲を間違いなく弾くことが大事なことではありません。それに、いくら新曲でもそこまで譜面を凝視してからでないと弾けないというのは、新人さんだけですよね?

 

11:お道具の扱いをはじめとするお行儀について♪♪

 

 弟子を見れば師匠がわかると言われます。三味線を熱心に習っている人なら、撥さばきや間合いなど師匠に似る場合が多いです。しかし、演奏の技量はその人のキャリアや才能にも左右されますね。私がここで言いたいのは、心がけ次第で誰でもできる、芸の上でのお行儀というようなことです。
 主に楽器の扱い方。三味線の糸は、棒状の糸巻きにクルクル巻き付けてありますが、糸巻きを見ればその人が上手かどうかわかるとよく言われました。ただ巻けばよいとばかりに乱雑に巻くのではなく、隙間なくきれいに巻けているか、端はなるべく短く始末されているか。これは見た目が美しいだけでなく、演奏中に糸がずれたりしにくいのでよい音につながります。
 移動する時の三味線の持ち方。変な持ち方だとどこかにぶつけたり、最悪の場合は人の三味線にぶつけて壊してしまったりする可能性もあります。それから三味線を置く時は倒れたり皮が傷ついたりしないよう気をつけますし、置くスペースが限られている時は他の人のことも考えて自分だけがスペースを独占するようなことがないよう心を配ります。
 複数人で練習などする時に、調弦でやたらに大きな音を出すことは野暮です。そこまで大きな音でないと音程を取れない人なのかなと思われます。調弦の際は状況に応じて撥を使うか指ではじくかとか、他の人が調弦中だなと思ったら自分の練習音を控えめにするとか、このようなことは常々師匠の振る舞いから学び、周りを見て考える意識を持っていないとなかなか身に付かず、いざ外に出たときにおかしなことをして、本人だけでなく師匠に恥をかかせてしまうことになりかねません。逆に、お行儀がいい弟子がいると、師匠の指導がよいのだと評価され師匠の株も上がるのです。日頃お世話になっている師匠にはそういう形で恩返しできればいいなと思います。
 ただし、振る舞いについては正解が1つとは限りません。それに関しておもしろい現象があります。私はよく文楽に行くのですが、複数の三味線弾きさんがずらりと舞台に並んでいると、演奏がない時の三味線の支え方が何通りかあるんです。みなさんご自身の師匠に教えられた方法をそれぞれ守っているからです。それを見て、AさんとBさんはあの師匠の門下、Cさんはこの師匠の門下だなとわかるのも楽しいです。
 そして何よりも大事なのは、師匠の芸に対する考え方や生き方からも学ばせていただくこと。そう考えると、逆に自分が師匠の立場に立った時には後進によい影響を与えるという使命があります。日常生活も含めて人として恥ずかしい行いをすることなく、常に人間性を磨いていかなければならない、と一生懸命なんです。
 

 

10:師匠は三味線がお上手?♪♪


 もう10年以上前のことです。私の後輩が師匠に向かって言いました。

「こんな言い方は失礼かもしれませんが(断るだけまだ偉い)師匠は本当に唄がお上手ですね」
隣に座っていた私は思わず「それは失礼やろ!」とたしなめました。

「上手」というのは評価する言葉なので、私は目上の人には使いません。師匠がおられないところで一般論のように使うことはあるかもしれませんが。
 師匠の舞台を聴かせていただいた時「よかったです」というのも評価になるので使いません。「感動しました」「素敵でした」とかなら自分の感想なのでよいと思いますが、そもそも

師匠の演奏に対して頑張って感想を言う必要はないように感じます。

「(勉強させていただいて)ありがとうございました」とかでよいのではないでしょうか。
 あと、私がとても違和感を感じるのが、他のお客様も聴いている舞台で、師匠の演奏に対して拍手をすることです。それは2つの違和感です。1つは、拍手もやはり観客として評価を表す行為だから、師匠に対して拍手するのは変だなということ。もう1つは、お客様がいる前で、自分の側の人である師匠に拍手をするのはお客様に対しても変だなということです。ビジネスでいえば、顧客の前ではたとえ上司のことであっても敬称をつけたり尊敬語で表したりするのはおかしい、というのと同じ感覚です。

 違和感に耐えられない私はどうすべきかと考えて、師匠の演奏後にはお辞儀をすることにしました。師匠に対しては「聴かせていただきありがとうございました。勉強になりました」という意味で、またお客様に対しては「師匠の演奏を聴いていただきありがとうございました」という意味です。

 これは誰かに教えてもらったわけでなく、自分で考えたことですし、賛否両論あるかもしれません。でも先日、とある講座で私の近くに座っていた文楽技芸員の研修中の方も、技芸員さんの実演後にみんなが拍手をする中、お辞儀をされていました。また、よく文楽劇場でお見掛けする鶴澤燕三さんの奥様も、ご主人の出演後はお辞儀をされていましたよ。

 

9:師匠への挨拶、メールなどの書き出しについて♪♪

 

 ある三味線の先生と話していて、師匠に対する挨拶で「お疲れ様です」はどうなのか?

という話題になりました。師匠が演奏されて楽屋に戻ってきた時などはよいが、他の場面で

挨拶代わりのように「お疲れ様です」を使うのはおかしい、と二人の意見は一致していました。

 ビジネスにおいて、上司など目上の人に「ご苦労様」と言っては失礼であり「お疲れ様」と

言うべきだ、と教えられるので、とりあえずお疲れ様と言っておけば無難だとばかりに多用されているのを感じます。メールの文頭に書いている人も多いです。

 でもよく考えてみて下さい。「お疲れ様です」は相手をねぎらう言葉です。目上の人をねぎらうという感覚はおかしいんです。例えば、上司が自分の営業先に同行してくれた後などに「お疲れ様でした」とは言えないですよね。そんな時は「ありがとうございました」です。

 演奏会が終わって次のお稽古に行った時「演奏会お疲れ様でした」などと言わないように。

師匠や先輩に対しては基本「ありがとうございました」です。自分が勉強させていただいたのですから。

 師匠に電話やメールをすることもあると思います。私は自分の師匠にメールするときは、

本来は電話が丁寧だと思うので「メールで失礼します」で始めるか、それが大げさに感じる時は「〇〇先生こんにちは」で始めるようにしています。


8:楽器や小物などの購入について♪♪ 

 

 津軽三味線奏者の高橋 栄香先生には、この「芸事のマナー事典」作成に関し、いろいろと

ご協力いただいています。先日、栄香先生がFBに載せられていた内容がものすごく心に

響きました。なんて素晴らしい生徒さん、また栄香先生の文章はまさに私が日頃から

考えていたことと同じで、とてもうれしくなりました。

 栄香先生にご了承いただき、以下に原文をそのまま転載させていただきます。

 

(高橋 栄香先生のFacebookより)

 本日は三味線屋さんに来ていただきました。長く花梨三味線を愛用し大事に弾いてきた生徒さん。

 そろそろ紅木三味線も考えてみたら?とお声かけし、見せていただくことに。

 お声かけした時は

 「まだまだ勉強中の身で無相応な道具を持たせていただいてもよいものか。

 でもこうして先生にすすめていただけるのであればひとつの機会かと思うので考えます」とのお返事。

 この世界の優等生のようなセリフ(笑) 今はネットでも気軽に何でも検索できるし通販でも買える時代。

 自分の判断で自由に買い物することもよいとは思いますが師匠の声かけをきっかけに

 お道具をグレードアップしたり新調したりすることは、そこにただの買い物だけでなく

 「認められた」とか「この道具を使えるまで上達した」というプラスの価値がついてくるんじゃ

 ないかなと思います。

 そして何より師匠が声をかけるということは、師匠も弟子の買い物に責任を持つということ。

 道具をひとつ揃えるだけでも、ただの買い物ではない価値がついてくるのが芸事なのかもと

 思います。

 そして、おかげさまでよい三味線とご縁があった生徒さん。

 これからもますます練習に励んでくださると思います!ありがとうございました。

                                                (転載終わり)

 

  

:録音・録画・撮影について♪♪

 

 お稽古中に録音をさせていただくことがあります。私の師匠からは、新しい曲を習うときにお手本として師匠の三味線・唄の録音をするよう指示があります。私は唄の個人稽古も受けているので、唄の時間は師匠にお願いして始めから終わりまで録音させていただいています。
 録音させていただいたものは、弟子だけが持つことを許される大変な財産です。当然ながら、外部で再生したり自分の勉強目的以外でコピーしたりすることは許されません。また、いつもと違うような内容を録音させていただく時は事前に必ず師匠に許可をいただきましょう。
 スマホの普及により、いつでもどこでも簡単に録音・録画・撮影ができるようになってしまいました。ホールなどでは事前に注意がありますが、演奏会は原則として録音・録画・撮影禁止です。ただし、演者から記録を依頼されている方は例外です。

 せっかく演奏しているのにたくさんのスマホが向けられていたら演者もがっかりです。演奏はその場で楽しみましょう。 

 

6楽屋見舞いについて♪♪

 

知人の出演する公演で、挨拶のために楽屋を訪問した方がよいのかどうか迷うことがあります。私は演者さんとの関係上どうしても挨拶が必要なときやお手伝いがあるとき以外は楽屋訪問はしないのが無難だと思っています。出演前後はバタバタしておられ、挨拶に来る人たちへの対応が大変なことも多いからです。

 ただ、演者さんによっては訪問してもらった方が華やかな感じがしてうれしい方がいるかもしれません。他の演者さんと同じ楽屋の時などは、悪目立ちしないよう静かに短時間で挨拶するにとどめるのがよいと思います。楽屋訪問すべき状況のとき、出演前と後、どちらがよいのかは悩むところですが、私は出演前がよいと思います。出演後は後片付けや打ち上げの準備など意外に忙しいものですし、挨拶に行ったらもう演者さんが退出してしまっていて会えなかったということもあり得ますので。

 さて「楽屋見舞い」と呼ばれる手土産についてですが、チケットを購入した場合や無料の公演の場合はあってもなくても構わないでしょう。チケットを頂いた時などは私は受付に手土産をお預けします。誰から誰への手土産かよくわかるように、自分でメモをつけておくか受付で頂くメモに記入します。このメモは、受付の方が間違いなく演者さんにお渡しするためのものです。

 のしの表書きは、芸事をしている方や芸事に精通している方は「楽屋御見舞」ですが、一般の方なら「御祝」「演奏会御祝」などの方がよいような気がします。言うまでもないことですが、そのまま持ち帰る時の負担を考えて軽いものを。演者さんがみんな車で帰るとは限りませんから。また、楽屋でつまんだり分けたりする場合もありますので、個包装で数の多いお菓子なども喜ばれます。賞味期限まで余裕があるかも確認しておきましょう。

 

5:上座・下座について♪♪

 

 一般常識における上・下はここで論ずるまでもないでしょうが、和室では床の間の前が上座です。床の間はその部屋で一番大事な場所です。決して荷物置き場ではありません。笑い話のようですが、実際にそういうことをよく目撃します。
 客席から見て舞台右端を舞台の上手、左を下手と呼びます。この呼び方は固定です。お客様から見て、右から出てきた演者が左に消えて行ったら「上手から登場して下手にハケた」ということです。舞台上の上座・下座は演出方法や進行・内容によって変わる場合もありますが、一般的には客席から見て中央もしくは右側(上手側)が上座です。
 4人掛けの電車の席では、現在は進行方向に向いた窓側が上座というのが通説ですが、一昔前は進行方向を背にした窓側が上座とされていました。その方が正解と思います。なぜなら、進行方向を向いていると景色が次々に視界に入っては後ろに消えていくため目が疲れます。反対に向いていると、遠去かりゆく景色をゆっくり楽しめるからです。移動における重力のかかり方を考えても、進行方向に背もたれがあるほうが楽なはずです。
 エレベーターでは奥が上座、操作盤の前が下座です。自分が先に乗るか後で乗るかは状況と立ち位置で変わりますが、目上の人や知らない人と一緒の時は、乗ったらすぐエレベーターガールのように操作係になります。乗るが早いか奥の方に陣取る人を見ると「ださー」と思います。あと、オシャレなカフェに男性が先に入ってきたり、よい席に男性が座っているのもダサいです(笑)洋式の場では常にレディファーストでありたいもの。和式の場でも私はレディファーストの方がスマートに感じますが、和式では男性優先が一般的なようです。

 

 

4:休んだときのお月謝について♪♪

 

 お稽古を休んだときも通常の1ヶ月分のお月謝は必要です。これについて、私が師匠から教えられ、自分でももっともだと思っている理由が2つあります。

 

1.お月謝によって師匠は生計(もしくはその一部)をたてているのだから、師匠を守るため。
2.通常のお月謝を払っていることで、1回休んだ月も残りの回は頑張って出席しようとするので、結果的に弟子のレベルアップにつながる。

 

 昔から、このような考えでお稽古の教室は運営されてきたのです。
 例えば、カルチャーセンターの教室で、休んだ分月謝が安くなったりはしないですよね。個人の師匠でも同じです。もし休んだ時の補講や振替があれば、それは師匠の好意であり、普通はそういうことはないものと考えましょう。
 補講をしてあげたいけど弟子が勘違いすると困るので敢えてしていない師匠もおられます。また、お月謝徴収について悩んだ末、口座引落し制に変えた師匠もおられます。どの師匠も、お金のことで何か言うときは悩んだ末のことです。なるべく師匠にそのような気を遣わせないことも弟子の心遣いですね。

 なお、 私の教室では、長期出張や入院など物理的な理由で1ヶ月来られない場合は相談に応じることにしています。 

 

 

3:お稽古に遅れたとき♪♪

 

 教室での団体稽古、グループ稽古に遅刻してしまうことがあるかもしれません。そのようなとき、例えば三味線なら練習部屋に入る前に駒をたてて糸を伸ばし、調弦もしてから入ります。つまり、入ってすぐに演奏に参加できる状態にしておくということです。そうしなければ、師匠やお稽古しているみなさんの手を止めたり、そうでなくても他の人の気が散ってしまうことにつながったりします。もし準備できるようなスペースがない場合は、静かに入って部屋の後ろなど邪魔にならないところで準備します。

 一般常識ともいえることですが、部屋の中で演奏している間は必ず曲が終わるのを待って、音が鳴っていないタイミングで入室するようにします。最近これをわかっていない人が多いように感じます。逆にいえば、こういう気遣いをする人は、マナーがよい人だなと思ってもらえるということです。師匠は見ていないように思えても必ず気づいておられます。

 ただ、リハーサル会場などすごく部屋が広くて曲の途中で入っても差支えない場合や、1曲がとても長い場合はこの限りではありません。ドアの外で5分も10分も待たなくてもいいですよ(笑) 

 

 

2:お月謝などのお支払いについて♪♪

 

 月謝袋には、新札または新札レベルのきれいなお金を入れましょう。また、お月謝以外にも

何かの会費などが徴収されるときは、新札が基本です。銀行の店舗に併設されたATMで新札への両替もできる機種が1台はありますし、窓口でもたいてい新札に両替してくれます。

 ただ、最近では両替に手数料がかかる銀行が増えてきていますし、ATMで両替できるのも午後3時くらいまでが多いようです。お仕事の合間に両替に行くのが難しいという人もいるでしょう。お給料を引き出した時やお札を崩した時など、新札やきれいなお札が混じっていたらできる限り普段の買い物には使わないようにしてとっておきましょう。少しだけしわのあるお札なら、アイロンをあてて生まれ変わらせる人もいます。

 どうしても古いお札でしか用意できなかったときは、師匠に一言添えてお渡しするのが丁寧だと思います。でもたびたび言い訳するのも大変だし、言われる師匠もご面倒だと思うので「最近は両替に行くのが難しくなってしまって」などと言っておけば、次回から察してくださるのではないでしょうか。

 新札を使うというこの慣習は、私としては本当はなくなった方が楽だなあと思っています。でも、もらう立場になった時はやはり新札の方がうれしく気持ちがいいものですし、和の習い事で長く続いてきた習慣ですので、今のところは従っておくのが間違いないと思います。

 なお、お月謝以外に何かの会費や参加費などを支払うときは、月謝袋以外の封筒(安いのでよいと思います)を用意し、封筒の外側に項目名、金額、名前を書いて提出しましょう。封筒の中に名前などを入れるよりもわかりやすく、徴収する人が楽です。裸でお金を渡すとか、お釣りが必要な渡し方などはしないように。それから、月謝袋に月謝以外のお金を入れたり、払う金額は同じだからといって月謝と合算で支払ったりするのもよくないです。集めたお金を管理する人の手間をなるべく少なくする心遣いが大切ですね。 

 

 

1:よき先輩を見つけることが最初の仕事♪♪

 

 芸事を習う上で大切なことの一つが「迷った時に誰に聞けばよいか」を考えることです。

もちろん、師匠に聞くというのが一番ですが、師匠にはどうしても聞きづらいこと、例えばお支払いに関することなどがあったり、また運営上のことは筆頭弟子などに任せてご自身は芸の継承にのみ注力されている師匠もおられたりするかもしれません。

 ここは率直に「会のことなどでわからないことはどの先輩にお聞きすればよいですか」と師匠にお尋ねしてみるのも一案です。その上で、習っていくうちに先輩方のお人柄などもわかってきましたら、例えば「会の運営や決まりに関することはこの先輩、芸の心構えに関することはこの先輩に聞く」など自分で判断していくことも大切です。師匠から最初に名前の挙がった先輩のことも立てつつ、です。

 大切なことを聞く相手を間違えてしまうと自分が痛い思いをするので、人に対する観察眼を養って下さい。ただし、自分より先に入門している人は全員(年下であっても)先輩という姿勢は忘れずに。

 さてここで大きな問題です。よかれと思って先輩に尋ねた答えが、自分としてはどうも腑に落ちない、というときはどうすればよいのでしょうか。私の経験からくる答えはこうです。その先輩の回答がどうしても間違っているような気がするときは、自分を信じて思った通りにしてしまうのがよいと思います。それでもし間違っても、師匠にお詫びして次から気をつければよいことです。でももし、先輩の回答通りに振るまってそれがやっぱり間違っていたとしたらどうでしょう。「〇〇先輩に言われたからそうしましたけど、自分の思った通りにすればよかったんですね」とは絶対に言えません。自分がいくら正しかろうが、上の人の失敗を指摘するようなことはしてはいけないのです。そして自分だけが悔しい思いをすることになります。

 こういう思いをなるべくしないためにも「大切なことを聞く相手」を探すことは本当に大事なのです。あと一つ、とても重要なことがあります。質問をした相手が先輩ではなく師匠だった場合です。師匠の仰ることが自分として腑に落ちないときはどうするのか。答えは「師匠の仰るとおりにする」です。それは、自分が選んだ師匠の仰ることに間違いは(ほぼ)ないからです。違和感を感じるのは、その時の自分がまだ師匠のその言葉を理解できる力を持っていないということなんです。言われたことに意義を唱えずとにかくやってみる、という力をつけることも大事な修行です。そりゃ師匠だって人間ですから、時には間違ったことを仰るかもしれません。でも師匠ご自身が後々それに気づいたときに、あの弟子はそれでも自分に従ってくれたということが師弟間の信頼へとつながっていくような気もします。

 

 なんだかすごく大変な難しいことを書いてるみたいですが、こういうことって突き詰めれば一般の企業や学校、社会においても同じことですよね。ただ普段は社会生活においてそこまで深く考えた行動はしていないということです。芸事で培われる礼儀や作法、考え方などは一般社会で生きていく上でも役立つことばかりなんです。