三味線教室に関するあなたの不安によりそう Q&A 

 

Q1:三味線を持っていないのですが、先に用意した方がいいのでしょうか? 

 

A1:師匠に相談してから購入しましょう。

 三味線は基本的に注文生産の楽器です。予算などに応じ、その時に手に入る最適な材料を使って製作するので、一棹(ひとさお・三味線の数え方)ごとに材料となる木や皮も違います。ベテランの奏者になると、材料段階から好みがある人もいます。最近では海外の工場で大量生産された三味線を取り扱う西洋楽器店などを見かけるようになりましたが、残念ながら粗悪品が多いです。師匠から良心的な三味線屋さんを紹介してもらいましょう。また、各師匠や一門によって音色や楽器の好みがあることもあります。なるべく周りの方とそろえておくのがよいでしょう。

 いきなり購入するのが不安な方は、レンタルもご相談いただけます。

 

Q2:えっどうしよう。祖母が使っていた三味線を譲り受けたのですが。

 

A2:ご安心ください。お祖母様の三味線を師匠が見てくれますよ。傷んでいるところを直したり皮を張り替えたりする必要があるかもしれませんが、できるだけお祖母様の思い出の三味線を生かせるように考えてくださるはずです。ただし、長く弾かずにおいていた三味線などはどうしても劣化があり修理が難しいものなどもありますので、その場合はいさぎよくあきらめてくださいね。

 お知り合いなどが三味線を譲ってくれるという時も、できればまず三味線の種類やコンディションを師匠に見ていただいてから、譲ってもらうかどうか決めるのがよいと思います。 

 

Q3:三味線は独学でマスターできますか? 習いに行くのはお金も時間もかかるし、仕事も忙しいので、ユーチューブとかで勉強できるならうれしいのですが。 

 

A3:結論から言いますと、三味線は独学ではマスターできません。まず三味線は上に書いたように選び方からしてとても難しく、扱い方も家電製品のように自分で説明書(教本)を見たりネットで調べたりして何とかなるというものではありません。新しいことを始めるにはまず「先達に聞け」何事においてもそうですが、特に伝統芸能を学ぶにはこれが最も正確で、唯一の方法なのです。

 三味線教室では、きちんとした師匠であれば、弟子の上達度に応じて三味線の扱いや演奏における細やかな心掛けコツなど折に触れ教えていただけますし師匠や一緒学ぶ人への心配り、芸に対する考え方、礼儀作法など技術以外のことについても有形無形での指導がありそれらは芸の世界のみならず一般社会においてもとても役立つことばかりです。お金も時間もなんとかやりくりして教室に通うとはそういうことです。

 ちなみに、関西を中心に活躍する津軽三味線奏者の高橋 栄水氏(私の夫)は、津軽三味線を独学しようとして三味線屋さんにいろいろ聞いたりCDやコンサートで勉強したりしましたが、1年後にやっぱりこりゃ無理だと思い、師匠の門をたたいたそうです。 

 

Q4:楽器を習ったことが全くありません。大丈夫でしょうか。 

 

A4:ギターなどをしていた人が三味線を比較的マスターしやすいということありますが、楽器経験がゼロであっても特に問題ありませんしむしろ自らを不器用と思っている人の方がまじめで素直なので向いているかもしれません。音楽経験のあるなしにかかわらず、興味を持ってコツコツやっていける人であれば時間はかかっても必ず上達します。

   

Q5:譜面が読めないのですが……

 

A5:三味線の譜面には色々な種類がありますが、民謡で主に使われているのは文化譜といって三味線のツボ(抑えるポイント。ピアノで言えば鍵盤)を数字で表したものです。また、三味線の糸の数にあわせた三線譜となっており、西洋音楽で使う五線譜と比べても格段にわかりやすい譜面です。

 番外編ですが譜面を使わず音だけを聴いて学ぶ方法もあります。昔の人はみなそのようにして習っていたので、耳コピが得意な人はそれでもよいでしょう。

 

Q6:教室は個人稽古とグループ稽古、どちらがよいのでしょうか。

 

A6:どちらも良い点があります。個人稽古は細かいところまで師匠に見ていただけます。グループ稽古は周りの人と合わせて演奏する力がつきますし、先輩のふるまいを見て芸に限らず様々なことを学んだりできます。仲間と切磋琢磨する上ではグループ稽古が刺激もありよいかと思います。

 私はどちらかといえばグループ稽古派ですが、自分の教室は普段は少人数のグループ稽古、年に数回は個人稽古を月謝内で実施しています。習いたい方のご都合やご希望(教室開催日に通えない、教室が遠いなど)があれば普段からの個人稽古についても相談可能です。

 

Q7  :  唄うのはどうしても無理なんです。

 

A7 : 残念ながら、三味線・民謡を学ぶ人がなかなか増えない理由の一つに「民謡なんてとても唄えない」というのがあると思います。私は、日本の伝統文化である三味線をする人がもっともっと増えてほしいので、どうしても唄を唄えない方に関しては特例として三味線のみの指導も行います。ただし、お稽古は他の方と一緒なので他の方の唄は聞いていただきます。

 習っていく中で唄も少しやってみようかなと思った時には方向転換してくださっても構いません。なお、藤本流の会員として名取・準師範・師範などを目指す場合は唄は必須です。上手に唄えなくても、譜面に忠実に唄えれば大丈夫です。

 

Q8:和の習い事ってお月謝以外にもいろいろお金がかかると聞いたことがあります。

 

A8:各教室や師匠の考え方によって様々ですので、必ず先輩や師匠にお尋ねください。私の場合は、負担が少なく三味線を習っていただけるよう、極力お月謝や会場費、イベント関係の実費以外にはお金がかからないようにしています。

 ただし、名取となった方については芸事をたしなむ人として恥ずかしくないよう、常識的なしきたりに沿った指導はいたします。具体的に言えば、演奏会や各種会合に参加した際の師匠に対するお礼、お中元・お歳暮の類などです。

 それらに必要なお金は高額ではないので心配しないでください。例えていえば、私は三味線を習い始めてから10年くらいの間は非正規雇用(派遣社員)で一人暮らしをしていましたが、生活費をすべて自分でまかなっていてもなんとかやりくりすれば出せるくらいの金額でした。

 ただし、何度も言いますが、こういうことは同じ三味線でも流派や師匠によってそれぞれのお考えがありますので、どこかに所属された時には必ずその一門の方法を確認するようにしてください。勝手な解釈やスタンドプレーは厳禁です。