☆彡映画「駅 STATION」と増毛のこと

 動画配信で「駅 STATION」を観ました。北海道の増毛(ましけ)を主な舞台とした、高倉健さん演じる警察官を取り巻く人間模様や巻き起こる事件を描いた映画です。

 私が初めて増毛を訪れたのは20代前半の頃。北海道が好きで好きで、その時はJRのニューワイド周遊券を駆使して1か月くらい道内を回っていました。ガイドブックにもめったに載っていない、もちろん街の名前を聞いたこともなかった増毛になぜ行く気になったのか……。

 その頃お金がなく、できる限り安く泊まれるところを探したり夜行急行で夜を越したりしていたので、貧乏旅行の味方ユースホステルのあるところを中心に行き先を決めていて「あ、明日はここに行ってみよう。なんて読むのかな?」てな感じで増毛に白羽の矢がたったのです。

 当時は留萌本線の終着駅(留萌~増毛間は201612月に惜しまれつつも廃線)。私は『始点』『終点』『最~端(最北端とか)』『一周』なんてことにめっぽう弱い。線路がぷつっと途切れてそこから先へは延びていない駅の雰囲気や、留萌~増毛間の海ぎわスレスレを走る車窓のダイナミックな風景に酔いしれました。増毛駅からユースホステルまでは歩いてかなり、15分くらいとかあったと思います。地域の青少年センターのような施設の中にあるためとても安かったのですが、一般客は私一人で他は男子高校生の運動部の合宿みたいで雰囲気はものすごかったです。

 不思議とこの街を気に入り、それからもたびたび訪れるように。30歳になる手前で北海道を自転車で一周したときは宿泊こそしませんでしたが、増毛駅で休んでいると同じような自転車一人旅のおじさんがいて「ここは高倉健さんの駅っていう映画の舞台になった街だよ」と教えてくれました。当時の旅日記にも書いています。あれから四半世紀を経てやっとその映画を観ることができたというわけです。

 余談ですが、その自転車おじさんとは1週間後に網走のスーパーの特売品売り場で再開してビックリ! 北海道を自転車やバイクで回っていると、だいたいみんな立ち寄る街や日程が似ているので、一度会った旅人に再開することが何度もありましたが、まさか増毛→網走とは! 全然関係ないけど『江戸の仇を長崎で打つ』という言葉を思い出しました。

2016年夏には廃線前の増毛線に乗るため再訪。ユースホステルはすでになく駅前のとほ宿『ぼちぼちいこか増毛館』にお世話になり、夕食後の飲み会で三味線の弾き唄いをしたり、増毛駅のホームで三味線を弾いたりもしました。そして2018年には夫とまた『ぼちぼち』へ。宿主Iさん、同宿の皆さんとおいしい海の幸と旅の話で盛り上がりました。

映画に戻りますが、高倉健さん扮する警察官は捜査のため増毛に連泊します。彼の実家はすぐ隣の雄冬(おふゆ)。今では国道が通じており車でわずか20分の道のりですが、平成4年に国道が完成するまで陸の孤島であった雄冬に行くには増毛から1日1往復の連絡船で1時間半かけて行くしか方法がなかったそうです。そんな話も『ぼちぼち』の奥さんJ子さんから聞いていたので、健さんが連絡船で故郷を訪ねるシーンも胸に迫るものがありました。

旅をして少しの時間でもその土地に身を置くことで、映像や文章だけでは味わえないその土地の空気や人々の生活、たどってきた歴史をしみじみと感じ、その土地を愛せるようになる。だから私は旅を続けているんだと思います。『ぼちぼちいこか増毛館』ここを訪ねるだけでも増毛に行く価値があると思えるいいお宿です。Iさん一家はお元気かな~と思って久々に『ぼちぼち』を検索したら、とほネットワークのHPで今年4月のIさんのインタビュー記事が出ていました。 

なお、映画はとてもよかったです。さくら以外の倍賞千恵子さんもすごい女優なんだなあと改めて思いました。