☆彡楽器と奏者の関係あるある その1

 現在、私は二棹の三味線を使っています。ちなみに、三味線の数え方は「一棹」と書いて「ひとさお」と読みます。三味線の長い柄の部分(ギターでいえばネックの部分)のことを「(さお)」と呼ぶのがそのまま楽器の数え方になったようです。箪笥(たんす)も一棹と数えますが、むかし箪笥に長い棹を通して持ち運べるようにしていた名残だそうです。なお、「一挺」「一丁」と書いて「いっちょう」と読む数え方もありますが、バイオリンなど西洋の弦楽器のイメージで、私は日本的な一棹の数え方が好きです。

 話は戻りますが、私の使っている三味線は、一棹はもうかなり前から使っている長棹(ながざお)で、もう一棹は夫がファンの方からいただいた短棹(たんざお)です。普段は長棹を使っていますがこれは主に長唄などに用いられる三味線で、民謡三味線は本来は短棹。唄い手の高い声に調子(キー)を合わせるためです。演奏会などで高い調子に合わせる必要がある時は短棹を使います。こういう話をしている時いつも「三味線は物理学やなあ」と思います。

 同じ調子に合わせるにも長棹の場合は糸のテンションがより高い状態にしなければなりません。わかりやすく言いますと、同じ種類の糸であれば、長い糸をはじくのと短い糸をはじくのとでは、短い糸をはじいた方が高い音が出ますよね。フルートよりも長さの短いピッコロの方が高い音が出るのと同じことです。また、同じ長さの糸であればユルユルな張り具合よりもピーンときつく張っている方が高い音が出ます。これを三味線に当てはめると、長棹であれば張っている糸も長いため、高い音を出そうと思ったら糸をよりきつく張らなければならないので、切れやすくなってしまう。だから人間の声の高い調子に合わせるには短棹の方が向いているわけです。

 ちょっと話は変わりますが、三味線の皮は消耗品です。大きな舞台にたくさん出演している演奏家は定期的に張り替えます。私たちも本来はそうすべきですが、まあちょっとモッタイナイ感じもあって、よほど重要な演奏を控えている時以外は皮が破れたりずれたりするまでは張り替えないで使っています。(その2に続く)