☆彡高潔に生きろ

 国立国際美術館のベルクグリューン美術館展に行った。ドイツ人美術商ベルクグリューン氏のコレクションを集めたもので、ピカソの作品を中心に、マティス、クレー、ジャコメッティ、セザンヌの5人に絞ったコレクションというのがよかった。
 私は単独の画家の美術館や作品展が一番好きである。観ごたえがあるしひとりの画家の生涯を俯瞰できるのがよい。印象派展のように学派でまとめられた展覧会は美術史的には価値があるけれども玉石混交で少々観づらい。また、〇〇美術館展のたぐいはその美術館の収集哲学に左右される。それに〇〇美術館展は実際に〇〇美術館に行って観る方がいいと思う。
 ベルクグリューン氏のコレクションには一貫した哲学が感じられた。20世紀美術のコレクションというくくりを守るため、すでに収集していた多くの絵を手放したそうだがセザンヌのいくつかの作品は残した。英断である。私は一番好きな画家がセザンヌ、二番目がマティスなのだが、この展示を観て、改めて近代絵画の父たるセザンヌの、市井の人々を描いた作品に流れる品のよさといったものを深く感じた。マティスも日本初公開の作品がたくさん観られ、パステルカラーの使い方もうまいんだなあと思った。
 この二人に対して私の中ではビカソはちょっと影が薄かったな。ピカソの昔の恋人で自身も画家であるフランソワーズ・ジローがビカソの人間性を糾弾したことからフランス画壇追放の憂き目にあい、アメリカに渡って活躍したという記事をネット上で読んだ。人間性うんぬんでピカソの作品の価値が下落するのかどうか私にはわからない。ただ芸術家であれ誰であれ、自分の行いが人として正しいのかどうかと考えるのは最も大切なこと、人間が人間たるゆえんである。

 美術館を出て映画に行った。『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』人間が悩み迷いながら、正しい生き方を求めてゆく物語である。アンソニー・ホプキンスはやっぱり最高。「それは正しい態度か?」「高潔に生きろ」